「『ダブルデート』なんてよく思いつくよな、あんた」
エドワードがロイに言った。
「カモフラージュさ。周りからは初々しいカップルとその保護者のカップルに見えただろう」
「なんだよ、『初々しいカップル』って。オレとウィンリィはそういう関係じゃないぞ」
「わかってる」
「……あんたたちは……どうか知らないけどさ」
急に何かに思い当たったようで、エドワードの声は低くなる。
「もちろん私と中尉もそんな関係ではないよ。エドワード、妬いているのか」
拗ねたようなエドワードの態度にロイは目を細めて、こめかみにキスを落とす。
「……ったく、ややこしいことしやがって」
「ややこしいことをしてでも君に逢おうとする努力を褒めてもらえないものかな」
「知るか……」
そこから先は言葉にならない。
うつぶせのままベッドに肘をついて、エドワードがぽつりと言った。
「あいつ……雰囲気変わった」
「誰が？」
「ウィンリィ。なんか急に……大人っぽくなったっていうか」
「女性は恋をすると美しくなるから。気になるかい？」
「別に」
「本当に？ 自分が原因でなくて残念だなんて思っていないだろうね、エド？」
「ないよ。しつこいぞ、大佐」
それから横目で恋人を見上げると、エドワードは尋ねた。
「男はどうなるんだ？」
「え？」
「恋をすると女はきれいになるならさ、男は？」
「……嫉妬深くなる、かな。もっともそれは女性でも同じか」
「他には？」
「さてね。……ひょっとして、きれいになったとか言われたいのか？」
「言われたかねぇよ」
エドワードはそっぽを向く。
すると人の悪い笑みを浮かべ、ロイはエドワードの耳元に唇を寄せるとささやいた。
「君はきれいだよ、エドワード」
エドワードがつっぷした。パサリとシーツの上に金髪が広がる。
「大佐……女向けの口説き文句をオレに使うな」
「あいにくと男を口説くのは君が初めてなので慣れてないんだ。君専用の口説き文句を考えなきゃな」
そう言うとロイは紅く染まった耳たぶを優しく噛んだ。
End
背景素材は篝火幻燈からお借りしました。