家へと向かう車の中で、ロイ･マスタングは物思いにふけっていた。
――額のキスだけで終わりにするつもりだったのに。
予想外の反応が嬉しくて、唇に触れて……本気になった。
14歳の子供に溺れている姿を部下に見せるわけにはいかないから、やっとの思いで身を離した。
その後エドワードが目を合わせないから、強引すぎたかと今度は不安になった。
だが……。
『……気が向いたらな』
拗ねるような姿も愛しくて……。
思わず笑みがこぼれる。
「で、首尾はどうだった？」
同乗しているヒューズが問い掛けてきた。
「なんのだ？」
聞き返してから気がついた。
ひょっとしてエドワードがパーティに出ることになったのは、こいつの入れ知恵じゃないのか？ 考えてみれば、ハボックがひとりであんな計画を立てるとは思えない。
「そのカナリアを喰った猫みたいな態度をみりゃ、愚問か」
ヒューズが意味ありげにニヤニヤしながら言った。……やっぱりそうか。
「全部は喰ってないぞ」
と、ひとこと言ってやる。
「残りをテイクアウトすればよかった」
「おまえな……」
ヒューズは何か言いたそうだった。
End
背景素材は篝火幻燈からお借りしました。