セントラルの地下都市にある「門」の周囲には、アメストリス軍によって集められた赤い石と爆薬とが積まれていた。
「これだけあれば、私とアームストロングとであれを破壊することができるか」
作業の様子を眺めながら、ロイ･マスタングが言った。
「よろしいのですか。ここを破壊してしまったら、エドワード君たちはもう……」
ホークアイが言いかける。
「その彼らと約束したのだ」
マスタングは、彼女の目を見ずに答えた。
そのとき、「門」に異変が起きた。
「何か来ます！」
「総員、一時退避！ 退避ー！！」
「新手か!? ばかな！」
ロイ･マスタングは身構えた。
だが――。
門からゆっくりと姿を現した物体は、セントラルを攻撃した敵の兵器とはどこか様子がちがっていた。正面に巨大な丸い物とラッパ型の物がついている。丸い物体には「目」のような模様が描かれており、さらにアンテナのような突起と四つ繋がった球が付属している。全体としては、ラッパ型のくちばしを持ったおさげ髪の目つきの悪い鳥の頭のように見える。そしてその物体には、かすかな錬成跡が残っていた。
これほど巨大で、しかもセンスの悪い物体を錬成する人間をロイ・マスタングはふたりだけ知っている。ひとりはアームストロング、そして、もうひとりは――。
「鋼の？」
つぶやくと同時に、ラッパ型のくちばしから声が流れてきた。
「あーあー、門の撤去作業中のみなさん、当方に戦闘の意思はありません。発砲はご遠慮願います。特に指パッチンで火花散らすヤツ、ドア開けるけど、いきなり爆発なんてさせんじゃねーぞ！」
*
ロケットから降り立ったエドワードをマスタングが眩しそうな目で見つめた。
「戻ってきたのか」
エドワードが苦笑する。
「ま……、いろいろあってさ」
「君の弟は？ 君の後を追って……」
「アルならいるぜ」
ロケットの搭乗口に赤いコートの少年が現われ、マスタングに一礼して地面に飛び降りた。その後から、ホーエンハイムも姿を現した。
「光のホーエンハイム。あなたまで……」
だが、ホーエンハイムに続いてハイデリヒが現れると、ロイ・マスタングは怪訝な表情になり、さらにそのあとからエンヴィを連れたノーアが現れるにいたって、唖然とした顔のまま、すっかり無口になってしまったのだった。
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