Froehliche Weihnachten 1

　エドワードがキャンドルに火を点すと、柔らかなオレンジ色の光が広がった。
「これを……あそこの祭壇に置くんだ」
　祭壇の上ではすでに何十というキャンドルの灯りが揺れている。この世界の神の子と戦没者にささげられたものだ。
「それがこの世界の風習？」
　アルフォンスが尋ねる。炎に照らされて輝く髪に縁取られた顔は、エドワードの記憶にあるものより幾分大人びている。
「よく分からないけれど、たぶん」
　風で火が消えてしまわないように、ふたりでゆっくりと燭台を運ぶ。祭壇のキャンドルの列の横に自分たちの灯りをそっと置いて、どちらともなく安堵のため息をついた。

「あの木は何？」
　灯りとガラス玉、さまざまな玩具で飾り付けられた木を見上げて、またアルフォンスが尋ねる。
「モミの木だ。クリスマスツリー、『聖なる緑の木』、永遠の命の象徴」
「きれいだね」
「ああ」
　そのまま二人で夜空に浮かび上がるツリーを眺めていた。左手にアルフォンスの手の温もりを感じて、エドワードは胸がいっぱいになる。泣きたいぐらいに幸せだった。

「兄さんとまた逢えて嬉しいよ」
「オレもだよ、アル……」

　エドワードは弟の金髪に触れた。
「本当に……元に戻れたんだな」
「うん、兄さん」
　アルフォンスがエドワードの右手を取る。
「兄さんの右手……」
「ごめんな、アル。おまえがせっかく戻してくれたのに、またなくしちまって」
「ううん、いいんだ。それに僕も4年間を失ったけれど……思い出したもの。兄さんのなくしたものも、きっと取り戻せるよ」

　義手では確認できない感触が知りたくて、エドワードはアルフォンスの頬にくちづける。
　外気に触れた頬はひんやりと冷たいが柔らかかった。
「ずるいな、やっぱり今でもオレより背が高い」
「そうでなきゃ、兄さんを守れない」
　アルフォンスは微笑って、それから真顔になる。
　母の瞳と同じ色の瞳がエドワードを覗き込んでいる。
「　　　　　　　　」
　アルフォンスが低い声でよく聞きとれない言葉をつぶやいた。
　そして――唇が重なる……。

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