見渡す限りの砂だ。頭上に太陽がぎらつく。焼けつくような日差し。だが、暑さは感じない。
――どこだろう、ここは？
見覚えのある風景だと、エドワードは思う。
――砂漠の街。なんという名前だったか。……リオールか？ 自分はリオールに向かっているのだろうか？
砂塵の向こうに人影が見える。
翻る赤いコート。その背に浮かぶフラメルの印。
――俺？
白い手袋をはめた両手が打ち合わされると、青白い錬成光が迸り、瞬く間に砂の壁が錬成された。そして、錬成を終えて振り返る人物の顔は……。
「アル！？」
確かにそれは弟のアルフォンスだ。
鎧の姿ではなく、エドワードの記憶にある幼い姿よりも少しだけ背と髪が伸びていて……。
帰れたんだ――と思う。
だが。
走ろうとするのに――前へ進めない。
もどかしく伸ばした手は――届かない。
――こんなに近くにいるのに！
「アル！ アル！ 聞こえないのか！ アル！」
声のかぎりに叫んだ名前は、砂と風とがかき消していく。
背景は神戸観光壁紙写真集の素材を加工しました。