アルフォンス・ハイデリヒの手紙 1

　元気でやっているかい？　父さんや母さんの様子はどうだろう？
　僕は元気だ。オーベルト先生の研究室にやってきて半年、ようやくここの環境にも馴染んできた。

　最初はまだ十代の学生だからと子ども扱いされたり、邪魔にされたりもしたけれど、せっせとレポートを提出してみせた甲斐あって、他の研究員と研究の話もできるようになった。もっとも僕は最年少だから、使い走りをやらされたりしてるけどね。

　今日はミュンヘンからお客さんが来る。
　エドワード・エルリック（EhlrichじゃなくてElricと綴る）という名前で、年齢は僕よりひとつ上。オーベルト先生も舌を巻くほどの鋭い論文を送ってきて、ここで研究したいといってきたんだそうだ。
　高名な学者の息子だという噂なんだけど、どこかの大学や研究所に籍をおいたことはないらしい。雑誌に寄稿した論文は結構注目されている。僕も読んだ。僕と一歳しか違わない人間が書いたとは思えないほどレベルが高かった。ここに来るまでは僕も「神童」なんて呼ばれてたけれど、彼にはかなわないな。「天才」って本当に存在するんだね。

　年上の研究員たちは戦々恐々としてるみたいだ。
　でも僕は年が近い人が来てくれて嬉しいよ。友達になれるといいんだけど。

　では今日はこのへんで。

アルフォンス・ハイデリヒ

P.S.
　さっき、エドワード・エルリックさんが到着した。遠目で見ただけだけど、印象的な人物だった。金髪の凄い美形だった。小柄で長い髪をまとめていたから、最初は女性かと思ったくらいだ。おまえが見たらきっと「王子様みたい！」って叫ぶと思うよ。