「アルフォンス、目を開けろ！ アルフォンス！ 死ぬなっ！」
腹部を真っ赤に染めたまま動かないアルフォンス・ハイデリヒに向かって、エドワードは必死に呼びかける。
「エド、彼はもう……」
言いかけるノーアにエドワードは叫ぶ。
「まだ死んでないっ！ まだ間に合うかもしれない」
――オレはまだおまえに何も言っていない。感謝の言葉も謝罪の言葉も。
「おまえのロケットはオレをちゃんと門の向こう側に送り届けたよ。どんな風だったか、話してやるよ。聞きたいだろ。だから……」
逝くな――と。
祈るばかりで――。
自分はなんて無力なのだろうと思った。
そのとき。
声がした。
「兄さん……」
鎧がエドワードの前に膝をついていた。
「アル……。まだ、魂を移していたのか」
「これ、使ってよ」
鎧が差し出す手の中には、赤い石があった。
「死んだ人を生き返らせることはできなくても、まだ息があるなら助けられるかもしれない」
「これは……」
「地下都市にあったのを拾ってきた。魂を移すときの増幅に使った」
「……だめだ。それは使えない」
「なんでっ!?」
「こっちじゃ錬金術は使えないんだ」
「そんなっ！」
「待って」
二人のやり取りをノーアが制した。
「私……わかるわ」
ノーアの指が鎧の手の上の赤い石に触れた。
沈んだ色をしていた石が明るく輝き始める。
「錬金術を発動させるには、術者と錬成陣を同調させればいい……エド、アルフォンスを助けるための錬成陣は!?」
「待ってろ！」
エドワードが両手を打ち合わせ、ノーアの手に重ねた。
青白く輝く錬成光が赤い石を中心にして、周囲に広がる。
