「あの大蛇の死体は錬金術で氷付けにするから、あとの処理は好きにしたまえ、リン捜査官」
司令部へと戻った四人にロイ･マスタングがいった。
汚れたスーツを着たままのリンとエドワードは、さっきから司令部の食堂から提供された食べ物を詰め込んでいる。
「わかっタ。フーのところの料理人に解体させル」
「ホテルのオークション会場での事故は、無許可で使用された地下遺跡が老朽化により崩れたことになっている。事故の救助に入った憲兵が『偶然に』盗品を発見し事件が発覚した。そしてシンの皇室から盗み出された宝物なんてものは『存在していない』」
「って、オレたち、あそこにいた客にバッチリ見られてるんだけど」
「オークションには輸入禁止の珍しい生き物も出品されていたというだけの話だ。。間違ってもシンのテロリストが生物兵器を持ち込んだなどという話にはならないから安心したまえ」
厭味なマスタングの言葉にリンが渋い顔になる。
「まあ、軍部もいろいろ手を回しているようだから、世間の関心は当面は盗品オークションに参加していた政府高官のスキャンダルと地下遺跡の崩落事故再発の危険性に向くだろう」
そういってマスタングは三課の課長でもあるホークアイにニヤリと笑いかけた。
「地下都市の調査と修復で三課は明日から忙しくなるな」
それからエドワードたち四人に向き直っていった。
「君たちのやりかたは相変わらず派手だが、まあ、終り良ければすべて良しということだ。なかなか良いコンビネーションだったそうだから、このまま、この組み合わせでいくというのはどうだね？」
一斉に拒否の言葉が返ってきた。
「やだね」
「断ル」
「遠慮しときます」
『拒絶』
マスタングが肩をすくめた。
「やはりね」
ホークアイが冷静に締めくくった。
「当然でしょう」
背景素材は篝火幻燈からお借りしました。