それから数週間たったある日のこと、エドワードたちのもとに一通の小包が届いた。
「兄さん、さっきの小包、差出人はフーさんだけど、リンさんからの手紙も同封されていたよ」
そういいながらアルフォンスは金褐色の液体の入ったカップをエドワードに渡す。
「これは小包の中身。シンのお茶だよ。疲れがとれるんだってさ」
「ふん、花の香りがするんだな。これだったら砂糖を入れたほうがよかねーか？」
「金木犀の香りだって。シンのお茶は砂糖を入れないのが普通だと思うけど」
「で、リンの奴どうしてるって？」
「うん、元気でやってるみたい。薬はちゃんと皇帝に献上できたって。蛇を盗んだ真犯人はまだ捕まえられないみたいだけどね。それが片付いたら、またアメストリスに視察に来たいっていってるよ」
「騒ぎになるから来るなっていってやれ」
「それからお礼だって、薬が少しだけ入っていた」
「皇帝への献上品の精力ビンビンってやつか？」
「それよりはもっと質の落ちるものみたいだけど」
「そんなもん必要ねえよ」
「注意書きがついてた。……男性同士でも使えるって。感度がよくなるって」
エドワードの頬が紅く染まる。
「おま……まさか何か話したりしてないだろうな？」
「リンさんには何もいっていないよ」
アルフォンスが答える。
「それより兄さん、そのお茶……どう？」
「ん？ さっきもいったろ。砂糖を入れたほうがうまいんじゃないかって……！」
何かに気づいたようにエドワードは手元のカップとアルフォンスの顔を見比べる。
「おまえ……まさかこの中に……」
「『まさかこの中に』？ ねぇ、兄さんもしかして、ボクがその中に『何か』を入れたと思ってる？」
にっこりと笑いながら、アルフォンスは兄に問い掛けた。
END
背景素材は篝火幻燈からお借りしました。