「准将、先日の列車乗っ取り犯の供述があがってきています。やはりあの列車を襲うよう指示したものがいるようですね」
ロイ・マスタングの執務室でホークアイが報告書を読み上げた。
「なるほど。先手を打ってあの兄弟を向かわせておいてよかったな。場合によっては事件の巻き添えでリン・ヤオ皇子が死亡する可能性もあったわけだ。たとえば憲兵の銃の流れ玉で」
「軍内部にこの件に関係している者がいるとお考えですか？」
「さあね。だが用心に越したことはない。うまくシッポを掴めれば、これからの手札になるだろう」
「彼らにこのことを知らせますか？」
「止めておこう。皇子は気づいているようだし、弟のほうはともかく鋼のは芝居ができないタチだ。知らせて、相手に気取られるのはまずい」
「了解しました」
「ところで例の招待状の手配はどうなっているかな？」
「アームストロング家のツテでなんとか」
「そうか、そちらの準備も頼む」
マスタングの手にはもう一通別の報告書があった。表紙には軍法会議所の文字が記され「極秘」のスタンプが押されていた。
「もうすぐ第一が動く。いままで政府高官がからんでいたせいで、動くに動けなかったからな。シンの介入はもっけの幸いとばかりに張り切っている。うちもせいぜい便乗させてもらうとしよう。」
背景素材は篝火幻燈からお借りしました。