How to Put on the Dress

「おまえの買ってくる服には、なんでいつもレースだのフリルだのがびらびら付いているんだよ、アル」
「いや、女の子らしいのがいいと思ってさ」
「しかも色がピンクだしっ」
「兄さ……姉さんが原色が好きなのは知っているけど、でもベビーピンクも似合うと思うよ。なるべく『鋼の錬金術師』のイメージから遠い色を選んだんだ。人体錬成で女の子になったのが軍部の人にバレたら困るでしょ」
「……ったく、どうしてオレまで司令部に顔出さなきゃならないんだよ」
「仕方ないよ。『鋼の錬金術師』の恩給の手続きのためには『遺族』全員が出頭すべしっていうんだから」
「死んでねーっつーの」
「んー、行方不明者は『死亡』扱いだからね」
「ちぇっ」
「恩給が出るのはありがたいよね。僕が働ければいいんだけど、まだ学生の身分だし、兄さんはちっさくなっちゃったしね」
「ちっさいゆうな。若くなったって言え」
「というわけで、兄さんはこれから僕の遠縁で扶養家族のエディスちゃんですから。司令部にいっても余計なことはしゃべんないように。男言葉はダメ。錬金術もダメ。何をいっていいのか分からなかったら、僕にくっついて顔を隠しているようにね。そうすりゃ内気な女の子で通るから」
「めんどくせぇのな」
「あとはこれ」
「何これ？　カツラ？」
「ウィッグ付きのヘッドドレス。兄さんの髪の色と同じものが見つからなくて、結局錬成した。縦ロールが可愛いでしょ」
「あー、もう部品がいっぱいあってワケわかんねー。レースひらひらのズボンとか」
「ドロワーズ」
「レース三段重ねのスカートとか」
「パニエもしくはペチコート」
「ワンピースには紐いっぱいくっついてるし」
「編み上げリボン付きです」
「上着はちっせえし」
「ボレロという」
「靴は……底が厚くてカカトが高いのは悪くないな」
「お気に召して幸い」
「でも着方がわかんねぇよ」
「大丈夫、僕が全部やってあげるから。着せるのも脱がすのも」

***

「ところでさ、どうして『遠縁』なんだ？　あいつの……親父の隠し子ですとかいったほうが話が簡単じゃないのか？」
「その案は却下」
「なんで？」
「兄妹は結婚できないんだよ、兄さん」
「え？」

***

「それにしたって、この服、ボタン多すぎ。着るのも脱ぐのもすごく時間がかかる。あー、うざってー」
「脱がすのに手間が掛かってじれったいところがソソるんだよ」
「……なんか今おまえの趣味の一端を垣間見たような気がする」
「そう？　気のせいじゃない？」

2005/04/25

……捏造未来。アルフォンスと自分を元に戻すための錬成で、アルフォンスは17歳の生身に戻れたけど、兄さんは11歳の女の子になってしまいましたという設定。